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2222HIT!
おやすみ……?



「ふう、ティルヴィアについたな」
「ホントだね〜。ここに来るの、わたし久しぶりなんだ」 と、セレナ。
俺たちは、はるばる南東の小さなアイル村から歩いて、ティルヴィア城下町にたどり着いた。
「…疲れた」
「ほんとーっもーつかれたーぁっ!やすもーよっ皇子ーぃ!」
「解っている、あそこを曲がったところに宿がある。行くぞ」
リヴェンの案内のもと、俺たち5人は城の大通りを進んだ。
数人はリヴェンに挨拶をしていたが、公にならないように、影をこそこそと歩いていた。

到着。すると…。
「えーやだー!あたし、このせまい部屋で5人なんて無理ー!」
声を荒げたのは、クリスだった。
お城だけあって、それは儲かる場所もあるが、儲からないところも必然的にできあがる。
城下町とは、貧富の差が激しいところである。
「…っていうのは、解ってるけど!なーんーでーお城に泊まらないのー!?」
「しょうがないであろう。貴様のような盗賊を城に入れるものか!」
「もー!失礼しちゃうわね!」
ここには、ティルヴィア第一皇子、リヴェンがいるが、同時にかの有名な怪盗マロンもいる。
「じゃあ、せっかくだから、もっと有名で、綺麗な宿に泊まろうよー!」
「そんなことしたら、私が城下町にいることが公になるだろう。事が荒立つから、それも駄目だ」
先程から、大きな声で会話している2人をよそに、俺ディズと、セレナ、エルトは落ち着いていた。
「孤児院で寝る部屋よりも確かにせまいし、ベッドも無いし、布団もたりないけど、まあ人数的には良いんじゃないか?」
「みんなで寝るのも、久しぶりだね〜」
「…そだね」
俺たちは孤児院で、十分せまい生活を送ってきたのだ。
「何よー!みんな夢が無いわね!」
相変わらず、怒っているクリス。
しかし、俺はもうすでに疲れている。
エルトも旅になれていないため、ものすごく眠そうだ。
「あのさ、何か話あるならしても良いけど、俺、もう寝ても良いか?」
「…僕も、眠いんだけど」
「えーっ?エル君もディズ君も?もう寝るの?まだ宿ついたばかりじゃんっ」
宿って言うのは、寝るところだ。休むところだ。
「…あ、あれ。シーツ3枚しかないや」
クリスの一声に、急にあたりが静まった。

「や、やっぱ、女の子が先よね!あたしと、セレナで一枚ずつ!あとは3人ね!」
「何!私は男3人で川の字を作る気はない!」
「僕もだよ、リヴェンと寝るなんて、地下のモグラと寝る方がマシだよ」
「何を…!」
「わ、わたしは良いよ?シーツ無くても…」
「駄目だよセレナ、女の子は冷えやすいって何かに書いてあったから」
「そーよそーよ、いいこというじゃない!だから、セレちゃんにはシーツあげてね!」
「しかし3枚しかないのだぞ!?」
「…セレナとクリスで一枚でいいじゃん……。後は僕に一枚でディズと皇子で一枚」
「え、エルト?皇子とディズが一緒じゃはみ出ちゃうんじゃ…」
「そうだぞ!お前とディズで一枚で、私が一枚!だろう!」
「なんでリヴェン君が一枚なのー?レディーファーストー!」

再び騒がしくなった。
もう良いだろうか、寝ても。
「…ふあぁ……。…おやすみー」
そこから、俺の視界は狭くなった。
最後に、クリスの…じゃあ、そうしよっか、ラチがあかないし。
という声が聞こえて、真っ黒になった。


「……ん……うーん…」
そっと目を開ける、何か苦しい、と思ったからだ。
「…は?」
俺の腹に、エルトの頭が乗っている。
「…こいつ…マクラ代わりにしてるのか?」
起こさないように、そっとどかすと、誰一人としてシーツを被っていなかった。
どうやら、全員使わないようにしたらしい。
エルトの右足を目で追っていくと、茶色い髪が見えた。
「…足下にはリヴェンの顔…か」
寝ても覚めても、けんか腰だな、こいつら。
セレナとクリスははじっこで縮こまっている。
しかも、セレナは俺のあげた宝石を握って寝ていた。
ちょっと恥ずかしいな、なんて一人で照れていると、声が聞こえた。

「……さん」
さん?
「………ね…さん」
…まさか。
後ろを振り向くと、リヴェンが眠っている。
寝言でまで姉さんかよ…。
あれだ、昔聞いたシスコンってヤツか。
「ス…ねえ…さ」
全く、そんなにミーナさんと仲良いのか、コイツは…。
……ん、ちょっとまてよ。
ミーナさんに、「ス」なんて付いたっけ?

俺もさっさともう一眠りしようと移動したとき、大きな音がした。
「…ねえさ、ねえさん…うるさいんだよ……りう゛ぇ…」
エルトの片方の左足がリヴェンの腹に命中している。
「ディズも早く寝てよね。起こすの面倒なんだから」
エルト…?いつから起きてたんだ…。
と思ったが口をむすぶ。
俺は再び眠りについた。


「ディズー朝!朝よ!おきなさーい!」
クリスの声がした。
「んーはいはい…」
と、起きあがった瞬間…。
「レイニーソング!」
大粒の雨が俺の頭上に降り注いだ。
だから、起こすときに魔法は使わないでくれ…。
「はあ…あれ、リヴェンとセレナは?」
「リヴェンなら、着いたってティルヴィア城に報告しに行ったわよ」
「セレナはあそこ」
そこにはまだ眠っているセレナがいた。
あまりにも気持ちよさそうに眠っている。
「あんなにすやすや眠られたら、起こせないわよねー…」
「でも、どうせ起きなきゃいけないんだし、ほら、セレナ…」

「…何」

……

…………なんていった?
「ねえ、今セレナが……変な言葉使ったように聞こえたのって…僕だけ?」
「…そ、そんなことあるわけ無いじゃない!セレちゃんよ?神官さんよ?」
咳払いをして、もう一度…。
「せ、セレナ?朝だぞ?」
「……ん…何?眠いんだけど…。ちょっと黙っててくんな…」
…。
「……ん?」
もう一度咳払い。
「…せ…せれなー?」
「…あ…?あ、ディズ。おはよ〜」
と、呑気にあくびをするセレナが俺たちの前に現れた。
「お、おう。おはよう…」


そんなこんなで、いつも通りのメンバーの、変わった一面も見ることが出来た、貧しい宿屋でした。
しばらくの間、クリスがセレナを起こすとき、俺たちも一緒にいなければ行けなくなった。
「だって、怖いんだもん」





――――だってさ。









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2222HITおめでとうっ水風船作品。
再び、ラン様から「雑魚寝」でリクエストを頂きましたv
エルトとリヴェンが参加すると、喧嘩が始まってしまうのはしょうがないのです。
雑魚寝のイメージはなかなか難しかったですね(汗)でも新鮮でしたv
ちょっと伏線も入れてみました^^
今回クリスが初登場しました。
早めに出しておかないと、永遠に登場しそうにないので…(滝汗)
セレナの寝起きが悪い設定もすこし出しました。イメージ壊したらすみません!!(汗)
リクエスト有り難う御座いましたv



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