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「……ね…!きの……」
「おち……さ…」

なんだ、朝から騒がしいな…。
ふ、と目が覚めると、頭上から水が。
「…おはよ、ディズ」
「…ってエルト!ここは俺たちの家じゃな…って、あれ…?」
どこだ、ここ。
見慣れない風景、気がつけば、ぬれているのはふかふかのベッド。
宿屋のシーツにお構いなしにレイニーソングを放つこいつは…。
「貴様!何をしている!」
「え、ええ!?皇子!?」
「お、おはよう、ディズ」
「せ、セレナ!?」
なんでここに、皇子、それにセレナまで?
セレナは確か、セインシグレ神殿に先日のアイル村の報告をしに帰り、その後王城に向かうって…。
おうじょう…?
「ごきげんよう」
そこには、昨日の夜に見た、薄いクリーム色の髪をした女性が微笑んでいた。
「姉上!親しく一般人と会話をしないように大臣たちにいわれているでしょう!」
あねうえ…まさか…?
「み、みーなひめ…?ってことは…」
「ヴィントネウル、ラディオス大陸、王都ティルヴィアのティルヴィア城だよ、バカディズ」
てぃ、ティルヴィア城だって?
そういえば、昨日ミーナ姫は、泊まるところならたくさんある…のような事を言っていたような……。
「それに姉上、昨晩どちらに行かれていたのですか!城のものは皆探していました!」
「わかっています、リヴェン。昨日はすみません。でも行き先は教えられません」
「姉う…」
「うるさいマザコン」
「なんだと貴様!」
そして名物である、リヴェン+エルト=喧嘩が始まった。
まて、まてまて、頭の整理が追いつかないぞ。
「ディズ、大丈夫?山越え大変だったって聞いたよ?」
そう、アイル村で魔族にねらわれた俺たちは、原因を探るため、山を越える。
そこで、変な魔術師の子供とクリスさんに会う。
ティルヴィアにつき、宿につくが、宿がない。野宿、というところに…。
「ふふふ、野宿と聞いてびっくりしましたわ。宿屋も3件ある王都ですのに、それでも足りなかったのですね」
「エルト!貴様そこになお…、…そうだ!ディズ!」
リヴェンの向きがエルトから俺に変わった。
「聞いたぞ貴様!兵士に無理を言って宿を取らせたというのに、なぜ野宿なんだ!公園で寝るとははしたない、その上、王族である姉上にすがるとは…!」
「あーあー、悪かった、悪かったですって。こっちも宿に泊まる予定だったんですよ。でもクリスさんが…」
そのとき、ミーナ姫様が声をもらして笑った。
「ミーナ姫様?どうかしました?」
「ふふ、いえ、自己紹介がまだでしたね。私はティルヴィア王国の王女、ミーナ・L・ティルヴィアと申します」
そういって立ち上がった。
自己紹介をしようとしたら遮られた。
「お名前はセレナさんから伺いました。エルトさんに…ディズさんですね」
「よろしくおねがいします」
エルトが敬語つかった…!…じゃなくて、
「よろしくお願いします。それと、すみません、あの…」
「田舎育ちなもので、姫様の顔を見たこと無い人なんです、ディズは」
お前もだろ!!
「いいえ、あの、私も勝手ながら、ディズさんに少し似ている方とお会いしたことがあって、もしかしてと思って声をかけてしまいました」
え…? 「俺に似た人…ですか?」
「ディズに似た?姉上、私もその話は聞いたことが…」
「こんな白髪まじりの青髪の趣味がおじいちゃんな人にですか」
エルト…。
「ふふ、気にしないでください。昔の思い出ですから」
リヴェンは不服そうに頷いた。
「それよりも姉上、母上から声がかかっていますよ。昨日の件は謝りに行った方がよろしいのでは」
「あら、そうなのですか?よかったらディズさんたちも…」
「姉上、母上には前もっての承諾がなければあえません」
「まあ、大変なルールがありましたね、それではディズさん、エルトさん、セレナさんごきげんよう」
そう言って、姫様は部屋を出て行った。
『ご、ごきげんよう…』
口まねでセレナと声をそろえてみたが、アイル村の村人は二度と口にすることはないだろう。

それにしても、俺に少し似た人…?
うーん、生き別れの双子とか、兄弟姉妹とか?まさかな。

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