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落下したエルトをおそるおそる見ると……。
「まったくさー。ご主人ったらさ、無理しすぎだし。ウチが手ぇあいてなかったらどうすんのさー?」
「助かってるよ、フェイ」
無傷だった。
港町ミックルでの戦いでも姿を見た竜の子供、フェイをつれて。
いつの間に召還したんだ…?
「へ〜!それが、君の、守護獣?炎龍、なんだ、へぇ〜」
「……フェイ、このチビフード魔術師が厄介なんだ」
エルトは、ひょい、とフェイの腕からぬけると、構えた。
「ちび、ふーど…?あははっ君と、あんまり背丈変わらないのに、ね」
「……ご主人、コイツ長髪にも載らないしさー。厄介じゃね?
「うん。やっかい」
子供たちの話題らしく、可愛らしいものだが、状況は確かに『ヤッカイ』だ。
俺たち剣士は動けない。つまり、「壁」となるモノがフェイしかいない。
長時間となると更にヤッカイだ。
「……ねぇ君。簡単に一発勝負にしよう」
「一発、勝負?」
こくりと頷くエルト。
「僕がしってる魔術と、何故か君は解釈が一緒で、詠唱も一緒。だから、同じ術なら使えるでしょ。あとは魔力の問題だから……あとはわかるね?」
「なるほど、ね。いいよ、一発勝負。ボクが、魔術決めて良いの?」
再び頷く。
「それじゃあ、聖の術、ブライト、カプリッチオが、いいかなあ」
「……うん、わかった。フェイ、頼んだよ」
「え、ウチ?うーんわかったよ」
フェイが深呼吸すると、フードの魔術師とエルトは頷いた。
「いくよーっ。せーのー……でっ!」

その瞬間、空気が凍り付くのを感じた。


『万物に広がりし光よ、美しく奏でる響よ、赴くままに歌われん狂想曲よ…』
光の渦が、二人を包んでいく。
『ブライト・カプリッチオ!!!!』

まばゆい光が視界を奪い、何も見えなくなった。





「リヴェン殿下へ。無事、お城へお戻りになったこと、心から嬉しく存じます。さて……」
セレナからの手紙を読むミーナは、すっかり落ち着いて座っている。
リヴェンはその内容も耳を通り抜け、落ち着かずに動き回っている。
「…ですって。セレナさん、すぐに城へ戻ってきてくださるそうよ〜」
姫は微笑むが、リヴェンは聞いていなかった。
「……リヴェン、私そんなに弱くないのよ?大丈夫よ」
「姉上…。しかし、もし、アレが奪われたとなれば、王様の…」
「お父様のことは良いのよ、リヴェン。今はお母様が長なのよ?」
姉上…と呟く皇子を見て、姫は姉離れしない弟の頭をなでた。
こんな事をするから、姉離れを出来ないだろうに、と思いながらも、なでた。
嫌がる皇子だが、姫は懐かしんでいた。
次期王となる弟だから、あまり話す時間も無いのだ。
「リヴェンったら、そんなにムキにならなくても。アレが盗まれるって決まったワケじゃないでしょう?」
「…アレは…王様が、姉上に渡した者です。どこの輩か解らないものに奪われるわけには…」
「リヴェン」
急に冷たい口調になる姫に、皇子はとまどった。
「あなたが、父上を尊敬していることはわかっています。でも、マロンさんもこの世界の人です。何処の輩、なんて言ってはいけません」
「…姉上……しかしっ」
「ミーナ姫様?いらしゃいますか?」 ドアをノックする音と、メイドの声がした。
「ええ、入っていいわよ」
「失礼いたします。リヴェン殿下はこちらですか…あっいらしゃいますね。伝令です。もうすぐ後軍の兵士と村人が到着するそうです」
「あ、ああ。わかった。下がれ」
「はい、失礼いたします。」そういって、メイドは帰って行った。
「……姉上、なるべくお身体もお守り下さい」
「ええ、善処するわ。……リヴェンも無理はしないでね」
頭を下げ、皇子は部屋を出て行った。

「……あなたは、彼女にだけは、そんなことを言っては駄目なの。……リヴェン」







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