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まばゆい光の隙間から声が聞こえた。
「あははっははっ!やっぱり、すごいね、君!」
「……君もね」
「やっぱり、すごいよ、エルトっ」
「……え…?」
「あはっ、やっぱり、ボクのことは、わかんない?そうだよね。あっ、ボクは、君を殺すつもりは、無いから、安心してね。力をみたかった、だーケ♪」
「っ…まって…っ!」
「エルト、また、あそぼーね」

光が止んだ。
気がついたら、フェイと、フードの少年は消えていた。
フェイは召還を終えたとしても、フードの少年は、跡形もなく消えていた。
山脈の風景が広がる。
空は真っ青だ。先程の白い世界が嘘のように、色づいて見える。
「……ディズも兵士サンも役立たず…」
ぼそりと呟くエルトに、俺たちは、
「す、すみません」
とかえした。

「……あ、あんた…ねぇ、君!」
先程の女性が、近寄ってきた。
よくみると、田舎ものの俺が見てもわかる美人だった。
赤色に近い紙を束ねている、軽い服そうだ。
「ねえそこのボク!」
「ボク…?僕?」
「そうよあんた、えぇと…エルト…君だっけ?あなたさっきのフードの子と別人だったのね!」
別人?エルトと…フードの危険な魔術師のこと…か?
「あぁよかったわ〜♪さっきあなた達と鉢合わせたとき、またあの危ない魔術師の子と出会っちゃったーって逃げたのよ〜」
ああ、だから最初にお互いを見たとき急に逃げいていったのか。
「なんで?僕とあの…チビフード魔術師は全然違うじゃん」
「そう…なのよね。なんか、顔が似てる気がしたのよ。気のせいだったわ〜!」
顔が……?
エルトは嫌そうな顔をした。
「ところで…お姉さん、誰?こんなところで一人で何してるの?」
急に話を振られて、女性はとまどった。
「馬鹿エルト。名前を聞くときは、ちゃんと名乗ってからだって!」
「だって、お姉さん僕の名前知ってたじゃん」
だーめだ。
「えっと、コイツはエルト・ギルティス。俺はディズ・ヴァイス。で、この人達はティルヴィアの兵士達。とある理由で、城に向かっているんです」
自己紹介をすませると、女性はぽん、と手をついた。
「あらぁ偶然!あたしはクリス・メディケイト。あたしもとある理由で山越えをしているのよね♪」
兵士がそれをきいて目を丸くした。
「この山脈を一人でか?盗賊もでるというのに、危険すぎる」
「えっ?あっええと、最初は一人じゃなかったのよ!でもあのフードの子と戦ったとき、他のキャラバンとはぐれちゃって……」
「何?そのキャラバンは助かったのか!」
「え、えぇ。進路を変えて…港町ミックルへ向かったの……とりあえず、ティルヴィアへ行くなら、あたしも一緒に行っても良いかしら♪」
そりゃ、この山脈に一人おいていくのも危険すぎるし…。
「勿論いいよね、兵士さん」
「ああ、かまわない」
「やっりぃ♪ありがとうね、兵士さんにディズ君にエルト君!」
こうして俺たちは8人で山脈超えを続けた。
幸運なことに、山賊に出会うことなく、ぬけることが出来た。
もしかしたら、フードの少年が追い払ってくれたのかもしれない。
そのことだけには感謝…ということになるかな。
エルトは歩きながらも何度も考え事をしていた。
無表情ながらも、悩みが見えた。
多分、あの少年のこと、なんだろうな。記憶の手がかりに…なればいいな、エルト。

『エルト、また、あそぼーね』


「……誰…なの?」







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