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外に出ると、美しい夕焼けもつかの間、すっかり暗くなっていた。
時計台の時刻も確認できない。
こんな時間ではおそらく宿も開いていないだろう。
「おとなしくクリスさんにお願いすればよかったのに」
お前は良いかもしれなけど、俺は無理だろ…。
途方に暮れて歩いていると、中央広場という場所にたどり着いた。
広い王都だが、それに似合わない小さな公園があった。
子供たちはすでに帰っているようだ。
「孤児院の遊び場のほうが楽しそうだね」
「王都か…。便利な建物を作るために、子供の遊び場を削ってくしか無いだろうな」
ふらふらと公園のベンチに座り込んだ。
「あー…どうするか、エルト」
「僕に聞かないでよ…」
どうするか、にはもちろん宿のこともあるが、これからの目的のことだ。
図書館に行くのもいいが、何を調べれば?
城に行くのも良いが、何を尋ねれば?
「ディズ、僕ここで野宿はヤだよ」
「俺だって嫌だよ…」

「あら?野宿なのですか?

「ああ、のじゅ……?」
二人しかいなかったはずが、いつの間にか背後に女性が立っていた。
長い金髪を左右に分け、二つに三つ編みで縛っている。
暗くてよく見えないが、黒いコートを着ているようだ。
「こ、こんばん…は?」
とりあえず挨拶をすると、微笑むような声がした。
「はい、こんばんは」
女性はベンチの後ろに立っていたが、挨拶をすると俺たちの前に来た。
こんな遅くに女性が…?何をしているのだろうか。
「野宿だなんて…夜は冷えます。私の家に来られてはいかがですか?」
「え…はい?」
「大丈夫です。部屋は余っています。母上も許してくださるでしょう。こんな若い方々が野宿なんて、認められません」
敬語で物腰も豊かだが、こちらが返答する余裕がない。
「ですが、私は少し用件がありますので、少々お待ち下さいね。」
「は、はあ…」
といって、サカサカと南の方に歩いていった。
何だったのだろうかあの女性は…。
「よかったねディズ。宿が見つかって」
よかった…けど、何か不安なんだが…。

その後、しばらくして北の方―ティルヴィア城―から多数の人間がバラバラと飛び出てきた。
何か叫んでいたようだが…?
寝息が聞こえるので横を見てみると、エルトが爆睡していた。





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